

鰹や煮干し、椎茸など一口に出汁(だし)といっても種類はさまざまです。
料理に旨味や深みをもたらす出汁の中でも、昆布だしは最もポピュラーなもののひとつといえるでしょう。
しかし、使う昆布の種類や出汁のとり方によって、同じ昆布だしでも異なる味わいが楽しめます。
今回は、昆布だしの種類や魅力、美味しさの秘密を解説するとともにおすすめの調理法をご紹介します。
一口に出汁といっても、その材料となる食材ごとに味の特徴や旨味の種類が異なります。
ここでは昆布出汁の特徴をご紹介します。
昆布からとった出汁は透明度が高く、食材の見た目に大きな変化を及ぼしません。
そのため茶碗蒸しやお吸い物など、白い色合いや透明度の高い見た目が求められる料理に適しています。
味自体も上品なので、さっぱりとした味が好まれる料理にも用いられています。
上品な旨味が魅力の昆布だしですが、出汁の取り方や使用する昆布の種類によっては、料理のベースになるほどの力強い味わいになります。
荒くとることで、他の調味料にも昆布の風味が負けることなく旨味を演出することができます。
昆布だしを使う最大のメリットは、素材の味を引き立ててくれることです。
上品な味わいで料理にコクと深みをもたらしてくれるので、料理の隠し味としても古くから愛されています。
出汁を取る方法によって、味わいが大きく変わってきます。
大きく分けると水出しと煮出しの2種類です。
出汁をとる前に必要な処理はどの方法でも共通しています。
まず初めに、昆布の表面に付着した汚れを軽く落としましょう。
濡らしたキッチンペーパーなどで軽く拭くのがおすすめです。
昆布の表面に白い粉が付着していることがありますが、これは昆布の成分なので落としてはいけません。
あくまでも表面上の汚れを軽く払うイメージで、優しく拭き取りましょう。
短時間で出汁をとる必要がある場合や、より強い味わいの出汁をとりたい場合は、昆布に軽く切れ込みを入れておくと良いです。
実は昆布の中でも、どの部分を使うかで旨味の出方には違いが生まれます。
根っこに近い部分はより味が濃い一方で、ややえぐみが感じられますが、先端部分はよりすっきりとした上品な出汁に仕上がりやすいです。
大きな昆布を丸ごと購入した場合は、料理に合わせてどの部分を使うのか変えてみても良いでしょう。
水重量の1%の昆布を漬け、3時間から一晩程度冷蔵庫で置いておくと、簡単に水出しを作ることができます。
香りが映らないよう、ラップや蓋できっちりと密閉しておくのがポイントです。
すっきりとした上品な味わいと透明度の高い色合いになるので、さっぱりめの味付けをしたい時におすすめです。
お吸い物や淡白な食材を使った煮物などに適しているほか、食材を色で邪魔したくない場合にもぴったりです。
煮出しの場合も、水重量の1%程度の昆布を使うのがおすすめです。
60〜80℃で沸騰直前まで丁寧に煮ると旨味を最大限引き立てることができます。
上品で主張の少ない味が魅力の昆布ですが、煮出すことでその存在感を強めることができます。
うどん・そば用のつけ汁として昆布の味を活かしたい場合や、他の調味料の味が濃い料理に合わせるのもおすすめです。
煮出すのは沸騰直前までであるのは、えぐみや海藻臭さが出てしまうのを防ぐためです。
繊細で上品な味の昆布だからこそ、できる限りえぐみや臭みは避けたいものです。
味の濃い料理などではグラグラと煮立てることもありますが、昆布の旨味を最大限発揮したい場合にはおすすめできません。
人間が美味しいと感じる旨味成分にはいくつかの種類があります。
そして旨味成分には、異なる成分を組み合わせることで相乗効果が生まれるという特徴があります。
旨味成分を理解した上で調理をすることで、ワンランク上の味わいを実現することができるのです。
ここでは、昆布がもつ旨味成分の種類とその特徴、嬉しい効能をご紹介します。
昆布の主な旨味成分としてはグルタミン酸が最も有名です。
アミノ酸系の旨味成分で、他にも玉ねぎや醤油、チーズなどに含まれています。
昆布が含むグルタミン酸の量は別格で、100gあたり200〜3400mgです。
他の食材の場合、同じ100gあたりに含まれているグルタミン酸量は玉ねぎが20〜50mg、醤油が400〜1700mgとされているので、昆布の旨味の強さが伺えます。
他にも同じアミノ酸系の旨味成分アスパラギン酸も昆布の美味しさの秘密です。
昆布の中のアミノ酸の12%程度をしめており、健康効果の高さからも注目されています。
美味しさを生み出すだけでなく、美肌や疲労回復効果が期待できる魅力的な成分です。
上品な旨味に加えて、独特の粘り気も昆布の魅力のひとつです。
この特徴的な口当たりを生み出しているのは、水溶性の食物繊維です。
アルギン酸が豊富に含まれていることで、昆布ならではの楽しい歯ごたえが生まれています。
このアルギン酸は高血圧予防効果が期待されるほか、アルコールの吸収を穏やかにしたり、コレステロール分解を促進したりと嬉しい健康効果が多いです。
他にも同じ水溶性食物繊維であるフコイダンという成分も同様に昆布の独自の粘り気を生み出しています。
フコイダンには胃と腸の活性化作用やがん細胞の自滅を促す作用、免疫効果を高める作用など非常に魅力的な健康効果があるため、ぜひとも日々の食事に取り入れたい成分です。
水溶性の食物繊維が多く水出しもできる昆布ですが、海で生えている昆布はどうなっているのかと気になられた方もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、生きている昆布が海水に出汁を放出することはありません。
なぜなら、ご紹介したような旨味成分は昆布の細胞の中に閉じ込められているからです。
出汁に使う昆布はもちろん刈り取られているので、水やお湯の中で細胞が壊れ旨味成分を取り出すことができます。
一口に昆布といっても、実は色々な種類があります。
ここでは主な昆布の種類とおすすめの調理法をご紹介します。
スーパーなどで手軽に手に入る昆布も、よくみると品種や産地が記載されているのでぜひ次回のお買い物時にお役立てください。
北海道知床半島にある羅臼地方沿岸でのみ採取される羅臼昆布は、関西や北陸などの一部の料亭で使われることが多く、その濃厚な味わいから「昆布の王様」とも称されています。
他の品種と比べると採取できる地域が限られており、希少な昆布ともいえます。
黄色みを帯びた濃厚なだしは水出しはもちろんのこと、煮出すことでよりコクのある香り高く贅沢な味わいを引き出すことができます。
強い旨味を持つ羅臼昆布は煮物や鍋物など出汁をしっかりと味わう料理に用いられることが多いです。
他にも煮昆布や炊き合わせ、佃煮として高級料亭を中心に愛されています。
希少価値の高い羅臼昆布を使う際には、昆布の旨味を活かすよう意識すると良いかもしれません。
道南地方から東北地方にかけて採取される真昆布は、上品な味わいが特徴です。
特に大阪を中心に関西地方で広く用いられています。
青森県や岩手県にも分布しており、形状としては、比較的幅と厚みがあるといえます。
中でも白口浜、黒口浜、本場折浜で採取されたものは道南産銘柄と呼ばれ、真昆布の高級ブランドとして知られています。
味としてはすっきりとした甘味があり香りはさほど強くないので、他の食材の邪魔をしません。
透明度の高い清澄な出汁は、色合いという点でも主張が強くないといえます。
上品でクセのない味わいが魅力の真昆布は、透明感のある見た目を活かした鍋や汁物にぴったりです。
また厚みと幅があるという特徴を活かしたおやつ昆布として加工されるケースもあります。
水出し・煮出しどちらの調理方法とも相性が良く、塩昆布やとろろ昆布、佃煮など幅広い形で利用される非常に万能な昆布であると言えるでしょう。
利尻昆布はその名の通り利尻島や稚内沿岸を中心に広く採取されている昆布です。
中でも利尻産昆布は高級品として高値で取引されています。
味のとしてはキレのある濃いめの旨味でありながらもクセが少ない上品さが特徴です。
出汁の色も透明度が高いため、特に京の懐石料理を作る際には一番だしに欠かせない昆布ともいわれています。
真昆布などと比べてやや硬く、削っても変色しにくいという特徴もあります。
上品で旨味の濃い利尻昆布は、お吸い物や鍋物などに適しているいわれています。
特にその上品な味わいを活かした湯豆腐が人気です。
他にも漬物やとろろ昆布に加工されることもあります。
黒昆布という名前に馴染みがないという方も多いかもしれません。
それもそのはず、この黒昆布は岩手県田野畑エリアでしか採取できない希少な昆布です。
特に天然物は断崖絶壁「北山崎」と「鵜の巣断崖」の崖の下にしか分布していません。
黒昆布の特徴は圧倒的粘り気と肉厚な食感です。
粘り気のもとであるアルギン酸やフコイダンが豊富なので、栄養価の高さも魅力のひとつです。
そんな希少な天然物の黒昆布は、田野畑村の道の駅「道の駅たのはた 思惟の風」が運営するオンラインストアから購入することができます。
一度食べたら忘れられない絶品の黒昆布を、ぜひご自宅で味わってみてください。
※田野畑エリアでしか取れない!絶品の「田野畑天然黒昆布」のご購入はこちらから
肉厚で圧倒的な粘り気が魅力の黒昆布は、出汁としてはもちろん、食感と粘りを活かした食べる昆布としてもおすすめです。
出汁を取るだけでなく、そのままお鍋の具材としてもプリプリ食感を楽しむことができます。
また、昆布巻きや和物、炒め物としても抜群の美味しさを活かせますよ。
日高地方沿岸で主に採取される日高昆布は、お値段も比較的お手頃ということもあり、関東圏でメジャーな昆布です。
最大の特徴は柔らかい繊維質で、他の昆布よりも柔らかな食感です。
時としては磯の香り・風味が強く、甘味や旨味が後に残りにくいさっぱりとした味わいをしています。
香りが強く昆布らしい上品な甘味と旨味を持つ日高昆布は、関東以北を中心にポピュラーな出汁昆布として用いられています。
また最大の特徴である柔らかい繊維質を活かし、おでん用の昆布や昆布巻き、煮物などの食べる昆布としてもぴったりな品種です。
古くから日本で愛される出汁のひとつ、昆布だしの魅力やおすすめの調理法をご紹介しました。
出汁のとり方や使う品種によって同じ昆布でも異なる味わいが楽しめます。
料理に合わせてこれらを使い分けることで、ワンランク上の仕上がりが目指せるでしょう。ぜひ、健康にも美容にも嬉しい効果がたくさんの昆布を味わってください。